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はじめに
個人塾を経営していていちばん困るのは、人(塾生)がいなくなってしまうことですよね。
たとえば、「ウチはたった1人でも子どもが来てくれればいい。」とか、
「子どもに勉強を教えるのが好きなだけで塾をやってます。」など。
そんなのはきれいごとにすぎません。
資金がなければ、子どもに十分なサービス(教育)を与えることができませんし、設備投資もできません。

一般事業である以上、塾に「お金」は絶対に必要ですよね!
経営にはいつも「危機感」を
個人塾は、少数の顧客(塾生)によって成り立っています。
ですから、一定以上の塾生数が確保できない年度(学年)があれば、それが即収入に反映されてしまいます。
塾がよくない状況に向かっているとき、それを経営者が素早く察知し、適切な処置を施さなければなりません。
状況①「1人の塾生がやめてしまった」
退塾者を1人出してしまったときのことを考えてみましょう。
(※家計や送迎などの問題で、通塾ができなくなった場合は除外します。)
塾をやめてしまった子どもやその保護者が、そのことを他人にどう伝えるでしょうか?
おそらく、塾に通っててよかったと思うことが10あったとしても、
やめてしまった1の理由の方を、知人には先に話しますよね。
「好評」は意外に伝わりにくいものですが、「悪評」はすぐに広まってしまいます。

「たった一人だから…」と、容易に片づけていい案件ではありませんよね。
状況②「塾生が少ない」
「広告を出して募集しよう」「無料講習をやろう」と考えてしまいそうな状況ですが。
仮に広告やイベントなどで、一時的に塾生が増えたとします。
しかし、塾の根っこの部分がしっかりしていなければ、新規生は塾に留まってくれません。
そもそも、塾生が少ないのには、何か原因があるはずです。
- 授業がマンネリになっていないか?
- 学校のテストへの対策は適切にやれているか?
- 塾の授業(講師)に対して不満をもっている塾生はいないか? など

まず、内部に目を向けるのが先なのでは?
状況③「塾生が多い」
経営が安定するにつれて、危機感が薄れていくような人は、おそらく経営者向きではないでしょう。
塾生が増えることで、塾に活気が生まれてくるのはよいことです。
ただ、それと同時に、一人一人に目が行き届きにくくもなりますよね。
塾生が「多すぎる」ことも、危機的な状況になってしまう要因になりうるということです。
そこで放漫な授業・経営をやってしまうと、まちがいなく破綻をきたします。
※興味がなければ飛ばし読みしてください。
数年前に、中3受験生の入塾申し込みが、たまたま集中した年度がありました。
それまでは定員で打ち切っていましたが、その年は定員より4名も多く受け入れました。
(紹介で初めの1名を引き受けたことで、それ以降の申し込みに対しては、歯止めがきかない状態になってしまいました。)
それが7月の段階で、志望校のボーダーに達していない子が、そのとき約半数。
合格させることができなければ、これまでの運営のよい流れが、すべてパーになってしまいます。
明らかに手が足りていない状況も、すぐにいいアルバイトなど手配できるわけもなく。
そこからの半年はとにかく塾の中をいつも走り回っていた記憶しかありません。
結果、奇跡的に全員合格してくれたことによって、そこからまた良い流れに乗っていけました。
とはいえ、直前の模試ではボーダーを下回っている子が数名、ギリギリの子も多数いたため、塾の成果としては反省しなければならない年度でした。
次の年からは内部にも外部にも、より明確に定員を打ち出すようにしましたが、
「もしあのとき多数の不合格者が出てしまってたら…」
思い出すと、今でも背筋が寒くなります。
教育は「余裕」のある環境で
「塾生の1人もやめさせることができない」という経営状況になってしまったとしましょう。
それは子どもに対する指導(教務)にまで影響をおよぼす場合があります。
多大な資金や時間・労力を費やすことになるとしても、ギリギリの経営の状態は一刻も早く抜け出さなければなりません。
子どもを厳しく叱る場面
指導をおこなう上で、塾生に厳しく接しなければならない場面がありますよね。
そのとき塾の経営面が、塾生の1人もやめさせることができない状況ならばどうでしょうか?
指導の厳しさに多少の躊躇が出たり、気持ちが守りに入ってしまいインパクトのある授業ができなくなったり…。
子どもを教育するには、指導する側が常に「安定した精神状態」であることが必要だと思います。
子どもは大人の様子を意外によく見ています
今の子どもは、ひと昔とはちがいます。
学校の先生や塾講師は、そう感じている人も多いのではないでしょうか?
大人の様子をうかがい、それによって応対も変えます。
学校の担任の様子を、さも自分よりも下の立場の人のように話すのも、最近の子たちによく見られる傾向です。
(自分の担任のことを「先生」ではなく、「あの人」と言う子もいますから。)
そのような今どきの子どもたちが、見るからに経営の安定しない塾で、講師の指導を素直に受け入れるでしょうか?
こちらから塾生を「やめさせる」ことは絶対にないとしても、
「ちゃんと勉強しなければやめさせられてしまう」という心理は、子どもの頭になければなりません。
つまり、塾が塾生を「やめさせ」ても影響がでないような経営状況にあることが、最低限必要です。
ここまでのまとめ
塾は教育と経営を両立させなければならない、いわば公立学校と一般企業の間に位置するような事業です。

学習塾は、私立学校とスタンスが近いかもしれませんね。
子どもの学力を伸ばしながら、利益を追求し、安定した資金も常に確保しておかなければなりません。
今はどの地域でも塾が乱立し、特に個人塾は苦戦を強いられている状況のようです。
大手塾は学力の高い子を確保する、いわゆる「いいトコ取り」。
その影響で、個人塾には偏差値40~45未満の子が流れてきやすいというのも、よく聞く話です。
ただ、「子どもの教育費には糸目をつけない」という親がいる一方で、「なるべくお金をかけずに子どもに適切な教育を施したい」という親の需要も、まだまだ存在します。
「力のない塾」が淘汰されるのは仕方のないことです。
ただ、やり方によっては個人塾にも戦う術が十分に残されているというのが、個人的に思うところです。
こちらの記事、ここからは「塾をつぶさない方法」について考えていきます。